浴衣の少女


歩いた先には用意周到な石階段が
悲しい程ごく自然に私たちキスをした
 
まんまる瞳でこちらを見つめる浴衣の少女
花火の音と同じように私たち無視をした
 
ああ 私にだって恐ろしいことはたくさんあるの
あなたもそう 私にとってそう ねえ 返事をしてよ
 
浴衣の少女に恋をしたあなた 私の瞳を抜け出して
生温い風と夕闇と一緒にどこかへ消えた
 
歩いた先には用意周到な自販機一つ
見慣れないラベルの安いサイダーに心奪われる
渇いているのは喉じゃないなんて戯言抜かしながら
その乱暴な刺激にかろうじて救われる
 
浴衣の少女に恋をしたあなた 私の瞳を抜け出して
生温い風と夕闇と一緒にどこかへ消えた
 
浴衣の少女に恋をしたあなた 私の心を抜け出して
今に落ちそうな満月と一緒にどこかへ消えた
 
ひねくれ者の私が放った何気ない一言を聞いて
似た者同士のあなたは言った
『「悲しくなるなら嬉しくなくていい」なんて
それならきみの嬉しいを全て奪うよ 悲しいだろ?』
 
何かおかしいよ!
 
ああ 私にだって 嬉しいことはたくさんあるの
あなたがそう 私にとってそう ねえ戻ってきてよ
 
浴衣の少女に恋をしたあなた 私の瞳を抜け出して
生温い風と夕闇と一緒にどこかへ消えた
 
浴衣の少女に恋をしたあなた 私の心を抜け出して
今に落ちそうな満月と一緒にどこかへ消えた
 
浴衣の少女に恋をしたい 私も彼女に恋をしてみたい
生温い風と夕闇とあなたとどこかへ消えたい
 
何がおかしいの?